project史縫というシリーズについてまとめたwikiです。

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 鬱蒼とした山の中。誰もいない夜の公園のベンチに座り、蛍光灯の灯りをただただ見つめていた。
 時刻は22時をまわっただろうか。夜の冷たさは私の身体を蝕む。
 私は何種類かのロープと、カイヤナイトという石と学生証を入れた巾着袋を握りしめる。
「はぁ……」
 重い、重い溜息を吐いた。
 この日のために何日もかけて準備したけれど、どうしても本番となると緊張してしまう。
 今日これが成功すれば、私を縛るモノは何もなくなる。「生きなさい」という足枷も、心を蝕む感情も。ただ、このことに対して恐怖の感情もある。今日これをしたからといって私に明日が来ないという保証はない。一瞬気を失って、目が覚めるとそこは現実世界という可能性だってある。明日が来てしまうことこそが、私にとって一番の恐怖なのだ。



◆◇◆ ◆◇◆



 ――私は小さい頃から陰で暮らしていた。目立った人間関係も無く、孤独の毎日を過ごしてきた。学校に行っても特にすることはなく、昼寝か読書をするだけ。もちろん友達は居ない。
 だけど、母だけは私を愛してくれた。
 私は父の顔を見たことはなかったけれど、それでも母は悲しむ素振りを見せなかった。

 そんな生活も、歯車が狂いだすのは一瞬だった。
 それが、つい先日の出来事。

 母が事故に遭った。見渡しの悪い交差点での交通事故。買い物帰りの母を、信号無視の車が轢いた。
 私を愛してくれた世界でたった一人の存在が、他人の不注意で消し去られるなんて。私一人を置いて、逝ってしまっただなんて。
「もっと、愛されたかった、なぁ……」
 自然と涙が零れる。

 できることなら、この今。この瞬間に「助けて」が言いたい。助けてと言って、助けてもらえるような。
 だけど今はこんなこと叶わない。私を愛してくれる人なんて、知っている人なんて。誰もいないから。
 遺書は書いていない。
 書いたところで、だ。読む人なんてだれもいないだろう。

 私は立ち上がり、一番近い木の太い枝に縄をかけた。丈夫な枝に、丈夫な縄。予備の縄はあるけれど、多分使わないだろう。置いていこう。
 首をかけて、ぶら下がる。
 瞼は自然と閉じ、ゆっくりと意識が遠のいていった。



◆◇◆



 もし……もし神様がいるのならば。一つ、お願いがあります。
 もし次の人生を迎えることができるのなら、私のことを忘れないでいてくれるような人が、そばに……。

 ずっと、そばにいてほしいです。

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