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ameagari_fuhto 2023年10月24日(火) 11:58:18履歴
◆知覚せよ「ING00056-2395/04/02/5:32」
鏡に映る私は、本当の私なのだろうか。崩壊した街の、誰もいない手洗い場の鏡の前。私はそこにぽつりと立っていた。
鏡に映る私――つまり、周りの人達から見た、私。きっと自分が思っているのとはまた別の私が見えているのだろう。
じゃあ本当の私って、何?
「そんなものなんてないよ」
いつしか鏡には私ではない別人が映っていた。低く、唸るような声が聞こえた。
私は突然の出来事に驚き身構えようとしたが、身体は縄で縛られたかのように動かない。
「あなたは、波に漂うただの漂流物。自我なんてものは存在しない」
鏡の中の誰かが鏡を割り、こちら側へと手を伸ばす。
心臓がつぶれてしないそうな勢いで動く。身体は動かせない。
頭の中がパンクしそうなほど情報が錯綜する。目は動かせない。
「ほら」
人ではないその存在の手が、私の頬に近づく。
あまりの恐怖に身体が押しつぶされそうになったとき、私の手にあったナイフがそれを刺していた。
呼吸が荒い。
心拍数が、だんだんとゆっくりになる。
ナイフが、それの身体から抜き取られる。
見上げると、そこには見覚えのある文字列が書かれた建物があった。
◆壊れた宗教団体「ING00062-2395/04/02/07:56」
「HEAVENS CRYSTAL」。この宗教団体は過去に起こした殺人やテロ行為などによってその教祖たちが死刑となった。
私はそんな気味の悪い宗教のとある施設に立ち入っている。もちろん、こんな崩壊されつくした世界に人は一人として存在しない。つまり私を咎める人はいないということだ。
一歩一歩、ガラスと瓦礫で覆われた床を踏みしめる。左右の壁には様々な彫刻が無数に並んでいる。……なぜビル群は崩壊したのにこの建物は崩壊していないのかは謎だが。
そして、私は最奥に辿り着いた。現代のこの世界に馴染まない、蒸気機関型のエンジンがある。
表面には歯車がずらりと取り付けられており、ホコリの隙間からは真鍮特有の色が見えている。
私は、その機械に興味を惹かれそっと手で触れた。
直後。轟音とともに私の身体は歯車に飲み込まれた。
◆クラッシャー「ING00068-2395/04/02/14:16」
私は深く沈んでいた。
身体はベルトコンベアに固定されており、一定のリズムをとりながら動いてゆく。
何かをつぶす音や歯車が回る音、火花が散る音。油臭く、煙たい、淀んだ空気。涙でぼやける視界。
私はゆっくりと動く何かに身を任せ、目を瞑る。
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
グシャ
身体に強い衝撃と骨が砕け肉がつぶれる音が響いた。
◆無機質な感情「ING00071-2395/04/02/15:01」
目を開けるとそこは、無機質な世界だった。灰色の冷たい床の上で、一人横になっていた。横向きの視界には雨粒が跳ねていた。
私は鉛のように重くなった身体を持ち上げ、辺りを見回す。
暗くどんよりとした霧がかかり、奥の方には教会と思しきものが見える。とぎれとぎれに聞こえる鐘の音は、あそこからのものか。
鎖につながれたような足を引きずり、歩き続ける。
破れた服の間からは血が滲み、雨によってそれがかき消される。
重く苦しい感情を背負いながら。私は歩みを止めるわけにはいかない。
◆「ING00072-yyyy/mm/dd/hh:mm」
暗い部屋の中に雨の音が響く。
私は薄汚れたベットの上で溜息をつく。
もう私は何も望まない。
運命は変えられないんだ。
なら、いっそのこと。
"世界"を壊せばいいんだ。
記憶がよみがえってくる。
とあるひとに憧れ、自分だけの世界を創った時。
望んだ結果にならなくて自暴自棄になった時。
私は劣等だ。私のような神がいなければ、こんな世界は生まれていなかった。
そして、こんなにも心臓を食わなくても良かった。
私は自分の胸にナイフを突き刺す。
どす黒い血が手にべっとりとつく。
たとえどんなに身体に傷ができようと、心にはまだ深く傷が残り続けている。
◆「ING00073-yyyy/mm/dd/hh:mm」
私は祈り続けた。
自分以外の他の運命は変えることができるが、私自身の運命は変えられない。
私は足掻いた。
こんな不条理な世界を創ったことの後悔。
私は願った。
自殺を望んだ。だけれど、自らの手では自らの生を奪うことはできなかった。
◆「ING00074-yyyy/mm/dd/hh:mm」
消滅、そして、憂鬱。
本当に、世界を創るべきだったのだろうか。いや、そうではない。
本当に、殺すべきだったのだろうか。いや、そうではない。
本当に、私が生きていてよかったのだろうか。いや、そうではない。
本当に、私がこんな苦しみだけでいいのだろうか。いや、そうではない。
◆「ING00075-yyyy/mm/dd/hh:mm」
私は旅をした。
どこまでも続く白い部屋。置いてあるものは変われど、景色が無彩色なのは変わりない。
◆「ING00130-yyyy/mm/dd/hh:mm」
旅路の終着点
鏡に映る私は、本当の私なのだろうか。崩壊した街の、誰もいない手洗い場の鏡の前。私はそこにぽつりと立っていた。
鏡に映る私――つまり、周りの人達から見た、私。きっと自分が思っているのとはまた別の私が見えているのだろう。
じゃあ本当の私って、何?
「そんなものなんてないよ」
いつしか鏡には私ではない別人が映っていた。低く、唸るような声が聞こえた。
私は突然の出来事に驚き身構えようとしたが、身体は縄で縛られたかのように動かない。
「あなたは、波に漂うただの漂流物。自我なんてものは存在しない」
鏡の中の誰かが鏡を割り、こちら側へと手を伸ばす。
心臓がつぶれてしないそうな勢いで動く。身体は動かせない。
頭の中がパンクしそうなほど情報が錯綜する。目は動かせない。
「ほら」
人ではないその存在の手が、私の頬に近づく。
あまりの恐怖に身体が押しつぶされそうになったとき、私の手にあったナイフがそれを刺していた。
呼吸が荒い。
心拍数が、だんだんとゆっくりになる。
ナイフが、それの身体から抜き取られる。
見上げると、そこには見覚えのある文字列が書かれた建物があった。
◆壊れた宗教団体「ING00062-2395/04/02/07:56」
「HEAVENS CRYSTAL」。この宗教団体は過去に起こした殺人やテロ行為などによってその教祖たちが死刑となった。
私はそんな気味の悪い宗教のとある施設に立ち入っている。もちろん、こんな崩壊されつくした世界に人は一人として存在しない。つまり私を咎める人はいないということだ。
一歩一歩、ガラスと瓦礫で覆われた床を踏みしめる。左右の壁には様々な彫刻が無数に並んでいる。……なぜビル群は崩壊したのにこの建物は崩壊していないのかは謎だが。
そして、私は最奥に辿り着いた。現代のこの世界に馴染まない、蒸気機関型のエンジンがある。
表面には歯車がずらりと取り付けられており、ホコリの隙間からは真鍮特有の色が見えている。
私は、その機械に興味を惹かれそっと手で触れた。
直後。轟音とともに私の身体は歯車に飲み込まれた。
◆クラッシャー「ING00068-2395/04/02/14:16」
私は深く沈んでいた。
身体はベルトコンベアに固定されており、一定のリズムをとりながら動いてゆく。
何かをつぶす音や歯車が回る音、火花が散る音。油臭く、煙たい、淀んだ空気。涙でぼやける視界。
私はゆっくりと動く何かに身を任せ、目を瞑る。
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ
グシャ
身体に強い衝撃と骨が砕け肉がつぶれる音が響いた。
◆無機質な感情「ING00071-2395/04/02/15:01」
目を開けるとそこは、無機質な世界だった。灰色の冷たい床の上で、一人横になっていた。横向きの視界には雨粒が跳ねていた。
私は鉛のように重くなった身体を持ち上げ、辺りを見回す。
暗くどんよりとした霧がかかり、奥の方には教会と思しきものが見える。とぎれとぎれに聞こえる鐘の音は、あそこからのものか。
鎖につながれたような足を引きずり、歩き続ける。
破れた服の間からは血が滲み、雨によってそれがかき消される。
重く苦しい感情を背負いながら。私は歩みを止めるわけにはいかない。
◆「ING00072-yyyy/mm/dd/hh:mm」
暗い部屋の中に雨の音が響く。
私は薄汚れたベットの上で溜息をつく。
もう私は何も望まない。
運命は変えられないんだ。
なら、いっそのこと。
"世界"を壊せばいいんだ。
記憶がよみがえってくる。
とあるひとに憧れ、自分だけの世界を創った時。
望んだ結果にならなくて自暴自棄になった時。
私は劣等だ。私のような神がいなければ、こんな世界は生まれていなかった。
そして、こんなにも心臓を食わなくても良かった。
私は自分の胸にナイフを突き刺す。
どす黒い血が手にべっとりとつく。
たとえどんなに身体に傷ができようと、心にはまだ深く傷が残り続けている。
◆「ING00073-yyyy/mm/dd/hh:mm」
私は祈り続けた。
自分以外の他の運命は変えることができるが、私自身の運命は変えられない。
私は足掻いた。
こんな不条理な世界を創ったことの後悔。
私は願った。
自殺を望んだ。だけれど、自らの手では自らの生を奪うことはできなかった。
◆「ING00074-yyyy/mm/dd/hh:mm」
消滅、そして、憂鬱。
本当に、世界を創るべきだったのだろうか。いや、そうではない。
本当に、殺すべきだったのだろうか。いや、そうではない。
本当に、私が生きていてよかったのだろうか。いや、そうではない。
本当に、私がこんな苦しみだけでいいのだろうか。いや、そうではない。
◆「ING00075-yyyy/mm/dd/hh:mm」
私は旅をした。
どこまでも続く白い部屋。置いてあるものは変われど、景色が無彩色なのは変わりない。
◆「ING00130-yyyy/mm/dd/hh:mm」
旅路の終着点