最終更新:
ameagari_fuhto 2022年08月27日(土) 01:16:39履歴
「お、起きたのか」
「……んっ……あ、おはようございます。鉱沙さん」
日はもう昇っており、雲の無い空からの光が鉄骨越しに差し込んでくる。
朝の特有の肌寒さ。流れてくる風が身体に染み渡り、無理やりにでも目を覚ませてくる。
相変わらず鉱沙さんは早起きだ。まだ7時だというのに。
「よく眠れたか?」
「まあまあ……ですね」
正直に言うと、コンクリートの上に布団を敷いただけだから体中が痛い……。こんなに痛くなったのは何時ぶりだろうか。
「ま、そうか。でもほら。今日の作業するぞ」
「あ、はい……」
すたすたと先に行く鉱沙さんの後を追いながらハンガーにかかっているジャケットを着た。
暗いトンネルの中、水の滴る音と二人の足音だけが響く。
「……言い忘れていたが、ここがC-1坑道だ。今はここでの採掘が主になっている」
「へぇ……ここではどんな鉱石が採れるんですか?」
「黄銅鉱が主だな。あとたまに黄鉄鉱が採れることもある」
おう……どう……こう? 未知な言葉が飛んでくる。
「ああ、知らないか。黄銅鉱が銅の鉱石で黄鉄鉱が鉄の鉱石だ。しかもここの鉱石の純度が高くてな。高品質なものだと20%のものもある」
「へぇ……」
鉱沙さんの足音が静まり、坑道の奥にある小さな部屋へとたどり着いた。
「ここ……ですか?」
「ああ、そうだ。確か今作業しているやつがいたはずなんだが……」
部屋の奥で石を見つめている一人の少女が居る。
「……あ、鉱沙」
その人の冷たい声が反響する。
私は多少怖気づいたが、鉱沙さんは私のことを今日から新しく来た静華だとして紹介された。ここの人達にも顔と名前を覚えてもらいたい。
一方、彼女は暗い顔でこちらを見てくる。
「よ、よろしくお願いします。えっと……」
「由利花です。よろしく」
「あっ、よっよろしくおねがいします!」
「……そう。じゃあ」
そう言葉を置いて、由利花さんは歩いて行ってしまった。
嫌われた? という言葉が頭の中を渦巻く。そこに誰かの声が1つ。
「いいや。朝はいつもそんな感じだよ。低血圧っていうのかな。だから今はそっとしている」
と、鉱沙さんの声が聞こえた。ということは嫌われてない……のかな?
「ま、そんなことはどうでもいい。ほら。先に行くぞ」
「あ、はい!」
それから、私は基本的な作業の仕方を覚えた。
鉱脈の見つけ方や鉱石の種類。各種道具の使い方や、今日は居ないが採掘してくれる人が運んできた鉱石を精錬する方法。いろんなことを覚えた。
◆◇◆ ◆◇◆
日が傾き、橙色の光が街に染まる。
坑道内から帰ってきた由利花は背もたれが壊れた椅子に腰かけながら、持ち帰った鉱石を弄ぶ。
手の中には黄銅鉱。金色の結晶がまばらに見える。
「静華……か。全く。あいつのネーミングセンスはどうなってるんだか……」
一人、由利花は呟いた。
「……まあ仕方ないだろ。あいつのことなんだから」
声が聞こえるが、独り言のすぐ後に私が口を開けた記憶はない。
私のすぐ横を見てみると、くすんだ錫杖を鳴らす人……というか天狗が居た。気配を消して近づくことだけは他の誰よりも技術があることを嫌でも感じさせる。
「ああ……貴方か」
「なんだよその反応は」
「いや……めずらしいな、と」
「まあそうだろうな。俺は天狗だから」
「そうじゃなくて。いっつも山に篭りっぱなしのくせに今日はなんでいるのか……って」
こいつは石鎚崎 銅錆。この天津岳に住む大天狗であり、滅多に山から下りてこない。山ではどんな生活をしているのか。山を下りたらどんなことをするのか。すべてが謎だ。噂では鉱石を操るということは聞いたことがある。
「暇つぶしだよ。鉱沙が新しい人間を連れてきたって言ってたからな」
「……全く。で、弟の方はどうなの?」
「弟……か。あいつは未だに天狗の支配を続けてるよ」
「……やっぱりそうだよね」
銅錆の弟。それは自分より下の地位にいる天狗や妖怪たちを支配し続けている厄介な奴だ。銅錆も弟の非行にしびれを切らして今は全くもって会っていないそうだ。
「というか、お前はあいつの行動を見てきただろ? 急に変えることなんて出来ないんだよ」
まあそうだよな。という言葉を思っていた矢先、背後から声が聞こえた。
「よお由利花」
「こんにちはー」
鉱石を乗せたトロッコを運び終えたばかりの二人がそこに居た。
「鉱沙と静華ちゃんか……ねえどうs……あれ?」
「どうかしたのか?」
「いや……さっきまで居たはずなのに……」
「気のせいじゃないのか?」
「……そうかもね」
全く。気配を消すことが得意だな。
そう思いながら落ちていた黒い羽を拾った。
コトッという下駄の音を響かせ、スギの木の上に足をつける。
「……あいつが静華か。能力を見る限り、もう少し様子を見るかな」
普通の人間ではない。という噂を聞いたがどうやらそれは正しいようだ。……つまりあいつは特別な存在。特別だからこそ、私たちが守っていかなければならない。
そっと音をたてながら木の上から飛び立った。
「……んっ……あ、おはようございます。鉱沙さん」
日はもう昇っており、雲の無い空からの光が鉄骨越しに差し込んでくる。
朝の特有の肌寒さ。流れてくる風が身体に染み渡り、無理やりにでも目を覚ませてくる。
相変わらず鉱沙さんは早起きだ。まだ7時だというのに。
「よく眠れたか?」
「まあまあ……ですね」
正直に言うと、コンクリートの上に布団を敷いただけだから体中が痛い……。こんなに痛くなったのは何時ぶりだろうか。
「ま、そうか。でもほら。今日の作業するぞ」
「あ、はい……」
すたすたと先に行く鉱沙さんの後を追いながらハンガーにかかっているジャケットを着た。
暗いトンネルの中、水の滴る音と二人の足音だけが響く。
「……言い忘れていたが、ここがC-1坑道だ。今はここでの採掘が主になっている」
「へぇ……ここではどんな鉱石が採れるんですか?」
「黄銅鉱が主だな。あとたまに黄鉄鉱が採れることもある」
おう……どう……こう? 未知な言葉が飛んでくる。
「ああ、知らないか。黄銅鉱が銅の鉱石で黄鉄鉱が鉄の鉱石だ。しかもここの鉱石の純度が高くてな。高品質なものだと20%のものもある」
「へぇ……」
鉱沙さんの足音が静まり、坑道の奥にある小さな部屋へとたどり着いた。
「ここ……ですか?」
「ああ、そうだ。確か今作業しているやつがいたはずなんだが……」
部屋の奥で石を見つめている一人の少女が居る。
「……あ、鉱沙」
その人の冷たい声が反響する。
私は多少怖気づいたが、鉱沙さんは私のことを今日から新しく来た静華だとして紹介された。ここの人達にも顔と名前を覚えてもらいたい。
一方、彼女は暗い顔でこちらを見てくる。
「よ、よろしくお願いします。えっと……」
「由利花です。よろしく」
「あっ、よっよろしくおねがいします!」
「……そう。じゃあ」
そう言葉を置いて、由利花さんは歩いて行ってしまった。
嫌われた? という言葉が頭の中を渦巻く。そこに誰かの声が1つ。
「いいや。朝はいつもそんな感じだよ。低血圧っていうのかな。だから今はそっとしている」
と、鉱沙さんの声が聞こえた。ということは嫌われてない……のかな?
「ま、そんなことはどうでもいい。ほら。先に行くぞ」
「あ、はい!」
それから、私は基本的な作業の仕方を覚えた。
鉱脈の見つけ方や鉱石の種類。各種道具の使い方や、今日は居ないが採掘してくれる人が運んできた鉱石を精錬する方法。いろんなことを覚えた。
◆◇◆ ◆◇◆
日が傾き、橙色の光が街に染まる。
坑道内から帰ってきた由利花は背もたれが壊れた椅子に腰かけながら、持ち帰った鉱石を弄ぶ。
手の中には黄銅鉱。金色の結晶がまばらに見える。
「静華……か。全く。あいつのネーミングセンスはどうなってるんだか……」
一人、由利花は呟いた。
「……まあ仕方ないだろ。あいつのことなんだから」
声が聞こえるが、独り言のすぐ後に私が口を開けた記憶はない。
私のすぐ横を見てみると、くすんだ錫杖を鳴らす人……というか天狗が居た。気配を消して近づくことだけは他の誰よりも技術があることを嫌でも感じさせる。
「ああ……貴方か」
「なんだよその反応は」
「いや……めずらしいな、と」
「まあそうだろうな。俺は天狗だから」
「そうじゃなくて。いっつも山に篭りっぱなしのくせに今日はなんでいるのか……って」
こいつは石鎚崎 銅錆。この天津岳に住む大天狗であり、滅多に山から下りてこない。山ではどんな生活をしているのか。山を下りたらどんなことをするのか。すべてが謎だ。噂では鉱石を操るということは聞いたことがある。
「暇つぶしだよ。鉱沙が新しい人間を連れてきたって言ってたからな」
「……全く。で、弟の方はどうなの?」
「弟……か。あいつは未だに天狗の支配を続けてるよ」
「……やっぱりそうだよね」
銅錆の弟。それは自分より下の地位にいる天狗や妖怪たちを支配し続けている厄介な奴だ。銅錆も弟の非行にしびれを切らして今は全くもって会っていないそうだ。
「というか、お前はあいつの行動を見てきただろ? 急に変えることなんて出来ないんだよ」
まあそうだよな。という言葉を思っていた矢先、背後から声が聞こえた。
「よお由利花」
「こんにちはー」
鉱石を乗せたトロッコを運び終えたばかりの二人がそこに居た。
「鉱沙と静華ちゃんか……ねえどうs……あれ?」
「どうかしたのか?」
「いや……さっきまで居たはずなのに……」
「気のせいじゃないのか?」
「……そうかもね」
全く。気配を消すことが得意だな。
そう思いながら落ちていた黒い羽を拾った。
コトッという下駄の音を響かせ、スギの木の上に足をつける。
「……あいつが静華か。能力を見る限り、もう少し様子を見るかな」
普通の人間ではない。という噂を聞いたがどうやらそれは正しいようだ。……つまりあいつは特別な存在。特別だからこそ、私たちが守っていかなければならない。
そっと音をたてながら木の上から飛び立った。