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ameagari_fuhto 2023年10月07日(土) 00:21:52履歴
私の打った一発の銃弾によって、この空間は白から黒へと変色していく。かつての色は消え去り、床や壁の区別さえ難しくなるほどに漆黒はこの空間を支配している。
銃を握る手は硬直し、胸だけは荒い呼吸とともに動いている。
目の前に倒れ込んでいる少女は、鋭く冷たい目でこちらを見つめる。なぜこちらに撃たなかったのかという目だ。
「私を殺して、また世界を崩壊させるんでしょう? なんで殺さない?」
どこで、道を踏み外したのだろう。どこで、私の作った世界を崩壊させようなんてしたのだろうか。
どこで、そんな劣等感が生まれたのだろうか。
一瞬、瞼を閉じた。
私の暮らす世界には、私のほかに三人の神様がいた。1人はこの世界――天城界――を作った神様。そして他の2人が、私の姉である。
運命の糸をつむぐ長女。
その糸を世界という大きな布に縫い付ける次女。
そして私が、その糸を断つ。つまり、命を絶つ。
私の仕事は至極単純なもので、姉から命令された運命をハサミで絶つことだけだ。そんな単純な作業を何十、何百、何千、何万年と続けてきた。もう無心でやってきた。しかしそんな中で私は、”世界を作ること”に出会った。
いつの日だっただろうか。私は単純作業を放棄して天城界を作った神様の元へと遊びに行ったときだった。その神様は何やら小さな箱庭を眺めていた。それは何なのかと尋ねたところ、どうやら私たちの姿に似せた存在――人間というらしいが――を箱庭の中で生活させて観察しているのだとか。私もと箱庭の中を見てみると、緑豊かな大地と澄み渡る海。さらにはきらびやかな神殿が見えた。そして神殿にいる人間たちは皆、神様のことを崇めていた。その様子がどうしてもうらやましく、私はその時から小さな箱庭の世界を作ることにした。
だけれどそれが間違いだったんだ。
私が作った箱庭で暮らす人間たちは、いつも血に飢えており争いばかり起こした。この箱庭での生活を良しとするもの、悪しとするもの。この箱庭を作った存在を敬うもの、嫌うもの。そんな濁り切った箱庭となってしまった。
私はそれに反感を抱き、日々自責の念と後悔、そして自分の才能の無さを実感した。自分の仕事もせず、に。
しかし、そんな抑うつ気分をなくしさらには才能まで得る最高の方法があったのだ。それが、「心臓を食う」ということだ。私たち神は心臓が力の源のため、何が何でも心臓を守る。しかし、簡単に殺せるというわけでもなく、その心臓をつぶすためには別の神様の手を使うか銀の弾丸かしか方法がない。
だから私は。この自分の手で、私以外の三人の神様を殺して心臓を食った。
一人目は天城界を作った神様。少し殺すのに手こずったが、その心臓は吐き気がするほどに上品な味わいがした。
二人目は三姉妹の中で一番上の神様。心臓は鋼のように硬く食べるのに苦労したが、なんとか喉を通った。
三人目は三姉妹の中で真ん中の神様。歯を突き立てた瞬間に大量の血が飛び散ってしまったが、なかなかに苦しみの味がした。
そうして私は、奪った能力をもとに箱庭の世界を作り変える……予定だったのだが。なぜかその能力を使ってもあの神様のようにうまくいかない。むしろ最初よりかどんどん最悪な方向へと向かっている。まるで沼に沈み込んでゆくように、混沌の沼へと堕ちてゆく。
結局、才能を得たところで、私には”才能を使う才能”がなかったのだ。
瞼を開けると、白く澄み渡る床に数多の血痕がついている光景が目に飛び込んできた。
あわてて目を見開くと、そこには血痕のかわりに倒れ込んでいる少女の姿が映った。
銃を握る手は硬直し、胸だけは荒い呼吸とともに動いている。
目の前に倒れ込んでいる少女は、鋭く冷たい目でこちらを見つめる。なぜこちらに撃たなかったのかという目だ。
「私を殺して、また世界を崩壊させるんでしょう? なんで殺さない?」
どこで、道を踏み外したのだろう。どこで、私の作った世界を崩壊させようなんてしたのだろうか。
どこで、そんな劣等感が生まれたのだろうか。
一瞬、瞼を閉じた。
私の暮らす世界には、私のほかに三人の神様がいた。1人はこの世界――天城界――を作った神様。そして他の2人が、私の姉である。
運命の糸をつむぐ長女。
その糸を世界という大きな布に縫い付ける次女。
そして私が、その糸を断つ。つまり、命を絶つ。
私の仕事は至極単純なもので、姉から命令された運命をハサミで絶つことだけだ。そんな単純な作業を何十、何百、何千、何万年と続けてきた。もう無心でやってきた。しかしそんな中で私は、”世界を作ること”に出会った。
いつの日だっただろうか。私は単純作業を放棄して天城界を作った神様の元へと遊びに行ったときだった。その神様は何やら小さな箱庭を眺めていた。それは何なのかと尋ねたところ、どうやら私たちの姿に似せた存在――人間というらしいが――を箱庭の中で生活させて観察しているのだとか。私もと箱庭の中を見てみると、緑豊かな大地と澄み渡る海。さらにはきらびやかな神殿が見えた。そして神殿にいる人間たちは皆、神様のことを崇めていた。その様子がどうしてもうらやましく、私はその時から小さな箱庭の世界を作ることにした。
だけれどそれが間違いだったんだ。
私が作った箱庭で暮らす人間たちは、いつも血に飢えており争いばかり起こした。この箱庭での生活を良しとするもの、悪しとするもの。この箱庭を作った存在を敬うもの、嫌うもの。そんな濁り切った箱庭となってしまった。
私はそれに反感を抱き、日々自責の念と後悔、そして自分の才能の無さを実感した。自分の仕事もせず、に。
しかし、そんな抑うつ気分をなくしさらには才能まで得る最高の方法があったのだ。それが、「心臓を食う」ということだ。私たち神は心臓が力の源のため、何が何でも心臓を守る。しかし、簡単に殺せるというわけでもなく、その心臓をつぶすためには別の神様の手を使うか銀の弾丸かしか方法がない。
だから私は。この自分の手で、私以外の三人の神様を殺して心臓を食った。
一人目は天城界を作った神様。少し殺すのに手こずったが、その心臓は吐き気がするほどに上品な味わいがした。
二人目は三姉妹の中で一番上の神様。心臓は鋼のように硬く食べるのに苦労したが、なんとか喉を通った。
三人目は三姉妹の中で真ん中の神様。歯を突き立てた瞬間に大量の血が飛び散ってしまったが、なかなかに苦しみの味がした。
そうして私は、奪った能力をもとに箱庭の世界を作り変える……予定だったのだが。なぜかその能力を使ってもあの神様のようにうまくいかない。むしろ最初よりかどんどん最悪な方向へと向かっている。まるで沼に沈み込んでゆくように、混沌の沼へと堕ちてゆく。
結局、才能を得たところで、私には”才能を使う才能”がなかったのだ。
瞼を開けると、白く澄み渡る床に数多の血痕がついている光景が目に飛び込んできた。
あわてて目を見開くと、そこには血痕のかわりに倒れ込んでいる少女の姿が映った。