Anti-meme stage 忌み子(非現実的空間)
【香】「……来たかな」
時刻は深夜2:50分。青く染まる夢の中。
「蒼風院 香そうふういん かおり」の名を持つ私は、この誰にも干渉されない唯一の空間にある人を連れてこさせた。
過去のトラウマを消させるために。
【水夜岐】「だ、誰……ですか……?」
【???】「私……だよ」
あえて聞き取りにくいように声をかける。
動揺している素振りを見せるミヤギ。彼女は私の大切な存在。血の繋がった、守るべき存在。その姿を見下ろしながら、私は呟いた。
【香】「私の事知ってる?」
【香】「悲しみを覚えているの?」
【香】「貴方は私の痛みを知らないでしょう?」
ノイズを重ねた言葉を投げつける。その先には苦しんだ様子のミヤギ。
トラウマを消すためには、まず記憶があるのかどうかを確かめないといけない。
苦しいかもしれないけれど、私はしなければならない。
【水夜岐】「う……あ……」
針の刺さった心を覗き込むように視線を落とした。
<アストロスキル>
「悲想-傍にいない幻覚-」
無章 無編「刺さる言葉の槍」
「悲想-幻想への逃避行-」
無章 無編「来ないで来ないで」
「悲想-無い支え-」
無章 無編「周りの下の下」
「自傷-紅い線-」
無章 無編「期待への遂行」
「自傷-認められたくて-」
無章 無編「操られ少女」
「自傷-意味の無き行動-」
無章 無編「壊された道しるべ」
「錯綜-心の場所-」
無章 無編「偽りの真面目」
「錯綜-光はどこに-」
無章 無編「帰幽の道」
「錯綜-もういいや-」
無章 無編「世界の意味」
【???】「やっぱり……完全にトラウマは消せないのね」
ミヤギの心に刺さる刃。それはあの時の記憶。
……私の腕が無くなる時。
死章「。」
お母さん。お父さん。私はあなただけは許さない。
優秀な頭脳を持つ貴族として有名な蒼風院家の血が流れる私。表向きでは長女として生まれたことになっている。
だけど本当は三女だ。長女、次女は優秀ではないからということで殺された。家族みんなの前で。
あの時の記憶は鮮明に覚えている。真っ赤に染まる床とナイフが。
それから私は心に誓った。
「いい子にならないと」って。
そして、私はあなたの期待に沿うため、どんなこともやってきた。頑張ってきた。生きてきた。
目的はただ一つ。あなたに褒められるために。
だけど、それは間違いだった。
……いや、小さい頃まで、は。
年を重ねるごとに当たり前のことができなくなってきた。できないことは自分の中に隠して、外側を綺麗にしてその場を凌いでいた。
けれど、どんなに頑張っても、どんなに足掻いても、次第に成功することも無くなり褒められることも減っていった。
暴力も、増えていった。
私の腕を切ったこともあったよね。
「これも愛だ」ってね。
でも、結局。あなたは私を殺そうとした。優秀ではなくなってしまったから。それが蒼風院家の掟だということを信じて。
それだけど、私はあなたを殺した。魔法のような力を使って。
ごめんね。もう操られるのは嫌なの。
私は、ミヤギを守るから。
【???】「私……結局ダメな子ね」
目の前には、私に怖気づいているミヤギの姿がある。
昔から怖がりだった。私が姉として守っていたこともあった。
私は貴方に幸せになってほしい。ただ、それだけ。
報われてほしいという願いを込めたナイフを向けた。
【???】「おはよう。ミヤギ」
ミヤギは私の弟。それ以下でも、それ以上でもない存在。
私の唯一の家族であるミヤギだけは救われてほしい。
「自分が誰かに殺される夢を見た」
それは、自分自身が変わる時。
あなたはこれから変わる時。
じゃあね。