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ameagari_fuhto 2022年11月06日(日) 01:44:59履歴

♪ 最終列車、死の果てに
――私、深淵夜花ミゾレは忘れられない記憶がある。あの瞬間のことだ。
私には最愛の人がいた。彼女は私の親友だ。
その人は笑顔が綺麗だった。どんなことでも笑ってくれた。私を慰めてくれた。私のわがままにも付き合ってくれた。喧嘩も少しだけあったが、仲直りをするのも早かった……気がする。
だけれど、そんな日にも終わりがやってくることは誰も気が付かなかった。
ガンだ。
その人にガンが見つかったんだ。
検査をしてもらった医者からは、「もう助からない」と言われた。ガンが進行しすぎてしまっており、もう治すことは不可能に近いらしい。
――余命は一か月。
私はあの人にできることを思いつく限りやった。
リンゴの皮を剥いて食べさせたり、折り紙を折ってあげたり、本を一緒に読んだりした。
ただ、薬の影響で髪が抜けることもあり、昔は水色でツヤのある長い髪も、今ではすべて抜け落ちていた。
どんな姿になろうと、どんな声になろうと。それでも、私は支えた。
私ができることを全てやった。
私のたった一人の親友のために。
そして、余命宣告から一か月が経った。
その時は、病室から私と一緒に桜を眺めていた。
春の訪れを感じさせるような風がおだやかに流れ込んでくる。
「もう……春……なんだね」
「ああ、そうだな」
弱弱しい声だった。昔聞いていた声はもっと元気だったのに。生気溢れる声をしていたのに。
もう、あの頃の姿は見れないのだろうか。
過去のことを思い出せば思い出すほど、私の眼から涙が零れ落ちる。
その時だった。
「もう……泣かないでよ、ミゾレ」
笑顔だ、笑顔が見られた。あの人の儚く美しい笑顔。
いつぶりだろうか……もう私はそんな顔を見られないと思っていたのに……。
思えば思うほど涙が出てきた。
もう何もかもが悔しくて、悲しくて、イヤになって。
「別れたくない」
その思いが、心の中で渦巻いていた。
すると、あの人は泣いている私の手を握ってくれた。
少し冷たいが、それでも、生きているぬくもりは感じられた。
そして、あの人は落ち着いた口調で、言ったんだ。
「じゃあね……また、来世で……」
あの人の眼から輝く涙が零れ落ちる瞬間、心電図モニターの数が0になった。
甲高い電子音が鳴り響く病室の中で、私はあの人の手を握った。氷のように、冷たかった。
笑顔の綺麗なあの人は、もう、一生目を覚ますことはない。
無理やりにでも「死」ということを感じさせられる。
手で拭えないほどの涙を零しながら、私はただひたすらに手を握り続けた。
◆◇◆ ◆◇◆
それからしばらくして、私は史縫高原とよばれる場所にたどり着いた。
ここなら、のんびりと過ごせると思ったからだ。
そう思っていた矢先……
「久しぶり。元気にしてた?」
亡くなったはずの、天之道水結がそこにいた。
END