project史縫というシリーズについてまとめたwikiです。

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♪ 最終列車、死の果てに


 ――私、深淵夜花ミゾレは忘れられない記憶がある。あの瞬間のことだ。

 私には最愛の人がいた。彼女は私の親友だ。
 その人は笑顔が綺麗だった。どんなことでも笑ってくれた。私を慰めてくれた。私のわがままにも付き合ってくれた。喧嘩も少しだけあったが、仲直りをするのも早かった……気がする。

 だけれど、そんな日にも終わりがやってくることは誰も気が付かなかった。

 ガンだ。
 その人にガンが見つかったんだ。

 検査をしてもらった医者からは、「もう助からない」と言われた。ガンが進行しすぎてしまっており、もう治すことは不可能に近いらしい。

 ――余命は一か月。
 私はあの人にできることを思いつく限りやった。
 リンゴの皮を剥いて食べさせたり、折り紙を折ってあげたり、本を一緒に読んだりした。

 ただ、薬の影響で髪が抜けることもあり、昔は水色でツヤのある長い髪も、今ではすべて抜け落ちていた。
 どんな姿になろうと、どんな声になろうと。それでも、私は支えた。
 私ができることを全てやった。
 私のたった一人の親友のために。

 そして、余命宣告から一か月が経った。
 その時は、病室から私と一緒に桜を眺めていた。
 春の訪れを感じさせるような風がおだやかに流れ込んでくる。

「もう……春……なんだね」
「ああ、そうだな」
弱弱しい声だった。昔聞いていた声はもっと元気だったのに。生気溢れる声をしていたのに。
 もう、あの頃の姿は見れないのだろうか。
 過去のことを思い出せば思い出すほど、私の眼から涙が零れ落ちる。
 その時だった。

「もう……泣かないでよ、ミゾレ」

 笑顔だ、笑顔が見られた。あの人の儚く美しい笑顔。
 いつぶりだろうか……もう私はそんな顔を見られないと思っていたのに……。
 思えば思うほど涙が出てきた。
 もう何もかもが悔しくて、悲しくて、イヤになって。

「別れたくない」

 その思いが、心の中で渦巻いていた。


 すると、あの人は泣いている私の手を握ってくれた。
 少し冷たいが、それでも、生きているぬくもりは感じられた。
 そして、あの人は落ち着いた口調で、言ったんだ。

「じゃあね……また、来世で……」

 あの人の眼から輝く涙が零れ落ちる瞬間、心電図モニターの数が0になった。

 甲高い電子音が鳴り響く病室の中で、私はあの人の手を握った。氷のように、冷たかった。
 笑顔の綺麗なあの人は、もう、一生目を覚ますことはない。
 無理やりにでも「死」ということを感じさせられる。


 手で拭えないほどの涙を零しながら、私はただひたすらに手を握り続けた。



◆◇◆ ◆◇◆



 それからしばらくして、私は史縫高原とよばれる場所にたどり着いた。
 ここなら、のんびりと過ごせると思ったからだ。
 そう思っていた矢先……

「久しぶり。元気にしてた?」

亡くなったはずの、天之道水結がそこにいた。



END

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