最終更新: ameagari_fuhto 2023年01月21日(土) 22:28:57履歴
"脅威"は前兆無くやってきた。
空は暗く染まり、空気は淀み、黒の灰が飛び交う。
高くそびえる建物は轟音と共に倒れ、瓦礫を散乱させた。積み上げてきたものはすべて、崩れ落ちた。
数多の人々が犠牲になった。
楽しむ者、苦しむ者、眠る者、覚める者。すべてが、一瞬にして、消え去った。
現実が現実ではなくなったこの日は「崩壊の日」と言い伝えられた。
その日を境に、次元の違う世界との境界が壊れた。
電子的な自動操縦小型機は機銃を装備し、ホログラムの人型機械は人を灰にする。
人はこれを脅威と呼ぶ他ないだろう。
あいにく巨大なファイヤーウォールはない。あるわけがない。
仮想の世界は現実に浸透したのだ。
人々は不可視の脅威から隠れ逃れるため、独自の暗号を使った。
黒い画面に映された緑色の目は人のみが触れられる。そのことはだれにも知られてはいけない。
閉じられた記憶を思い出させないように。